2019年第1回草地調査

4月22,23日草地調査を行いました。今回はいくつかの牧野について簡単な記述をしてみました。
 
I牧野
 焼却灰や堆肥による土壌改良が進んでおり、イタリアンライグラスの成長は例年よりかなり良好です。イタリアンライグラスの成長が良くなったことと土壌の改良により、酸性土壌に適応した背が低く、地下茎で広がっていくヌカボの勢いが弱まっています。このヌカボの勢力が増加するか衰退するかが草地の生産性をする上で重要な評価基準になります。今後も草の生育を見ながら焼却灰等の利用を計画してください。

C牧野
 昨秋の堆肥の施用により、イタリアンライグラスの成長は順調です。草の色等から判断して、現在のところ堆肥の連用による牧草の質の悪化が問題となることはないと考えています。しかし、土壌分析の結果を見ながら、今後の堆肥の利用計画を検討する必要はあると思います。

C牧野
イタリアン優占になった


T牧野
 オーチャードグラスを主体にした草地にするために更新した草地は、現在ではほぼ完全にイタリアンライグラス(夏を越すタイプの交雑種)になっています。このような状態になった草地の場合は、1番草でしっかり収量あげることが重要です。そのためには、3月初中旬の春肥の施用と3番刈りを9月中に終わらせることが必要です。去年秋に更新した草地については、オーチャードグラスの割合をしっかり見極めたうえで、オーチャードグラスの株数が十分確保できるようであれば、秋の最終刈り取りを10月中旬に遅らせることでイタリアンライグラスの発芽を少なくする対応が必要です。逆にイタリアンライグラスが優勢でオーチャードグラスでは十分な収穫量が得られないと判断される場合には9月中の3番草刈り取りが必要です。また、土壌が未だ酸性に傾いているためにオーチャードグラスの成長が抑制されているようですので、秋の刈り取り後の石灰質肥料やリン酸質肥料の散布がのぞまれます。


NK牧野
 年2回の刈り取りが行われることで、草種としてはオーチャードグラス、トールフェスクなどがしっかり残っています。収穫量をどの程度期待するかを想定したうえで、必要であれば3月初中旬の施肥と刈り取り後の追肥量を増やすことで調整してください。ヨモギやワラビの侵入が見られますので、これらの勢力拡大を抑えるためには、石灰質肥料を最終刈り取り後に施用することが有効だと思われます。

NS牧野
 主な草種はオーチャードグラスで成長も順調です。しかし、ワルナスビが種子を着けており、多数の種子が草地内に散布される可能性があります。2番草になると株から出芽するものと、種子から発芽するワルナスビがかなり多く混じる可能性が高いと予想されます。1番草あるいは2番草の刈り取り後の発芽・出芽個体数や生育状況を見ながら、餌にした場合の問題や今後の抑制方法、更新の必要性などの対応策を検討する必要があります。

Y牧野
 イタリアンライグラスは順調な生育をしていますが、土壌の酸性化が進んでいますので土壌分析の結果を参照してください。更新予定の草地については、現在の草がイタリアンライグラスなので、オーチャードグラス・トールフェスクを播いても比較的短い期間でイタリアンライグラスの草地に戻ってしまう可能性があります。これをできるだけ避けるためには、①現在大量のイタリアンライグラスの種子が土中に落ちていますので、播種作業の前に一旦イタリアンライグラスを発芽させ、除草剤処理を行う必要があります。②土壌の酸性改良が重要ですので、石灰資材をできるだけ早期に散布し、牧草の発芽時には土壌改良が進んでいる状況を作っておく必要があります。③オーチャードグラス主体の草地にした場合は、3番草の刈り取り時期を10月中旬以降に遅らせる作業体系に変更し、侵入してくるイタリアンライグラスに発芽機会を与えないようにすることが重要です。

イタリアン少ない
イタリアン個体数が少ない



IM牧野
 土壌の酸性化がかなり進んでいますので、石灰質資材の施用が必要です。土壌のアルミの害やリン酸欠乏のために、根が極端に浅くなっています。また、土壌の酸性が強いために、追播した牧草や自然に落ちたイタリアンライグラスの発芽や初期成長も悪くなっています。収穫する草の種類によって草地の使い方や管理方法を決める必要があります。イタリアンライグラスで収穫をあげることをねらうならば、9月中には必ず刈り取りを行うことと春肥を散布することが増収に有効です。

O牧野
 リードカナリーグラスが安定した草地を作っています。苦土が不足する症状が出ていましたが、苦土石灰を施用されているようですので、今後、成長も安定し、餌としての栄養価、摂取量にも良い効果が出ると期待されます。苦土石灰の効果については、今年と来年の土壌分析結果で確認してください。

IH牧野
 草地の主な草がイタリアンライグラスになっているので、春肥を重点に施肥を行うことと、3番草の9月中の刈り取りが重要になります。草地管理が労力的に大変負担になるかと思いますので、3番草の刈り取り時期を確実にすることをポイントにして、施肥作業などはできるだけ省力化するは春施肥量は期待する収量に合わせて調整する土の酸性化が進んでいることから、苦土石灰の施用は大きな効果がでると思います。オーチャードグラスの割合の減少にも関係していますが、土壌分析の結果を見て今後の土壌改良のための施肥を検討する必要があると思われます。

TK牧野
 土壌改良材や堆肥の施用によりオーチャードグラスの成長は非常に良好であり、目立っていたベルベットグラスもかなり抑圧されています。表土がかなり薄い傾向があるので、今後とも土壌分析を参考にして石灰資材の計画的施用を実施してください。

A牧野
 オーチャードグラスとトールフェスクの株が消えた場所にイタリアンライグラスが入っていましたが、今年はそのイタリアンライグラスがほぼ全て消え、その後にナズナなどの春の雑草が茂っています。イタリアンライグラスがないと現在のオーチャードグラスとトールフェスクの株数では収量が大きく下がってしまいます。イタリアンライグラスが消えた原因として考えられるのは、昨年の3番草刈り取り時期がやや遅くなった可能性があります。土壌の酸性化がかなり進んでいるために、土壌中のアルミニウムの害で発芽したイタリアンライグラスの根が十分伸びることができず、霜や低温の影響を受けてほとんどの個体が枯死したと推定されます。
今後の対応としては、2ないし3年間の経過を見ながらイタリアンライグラスの回復を待つか、イタリアンライグラスの枯死部分にオーチャードグラス・トールフェスクの追播を行うことが考えられます。いづれにしても、土壌酸性の改良が必要であり、石灰資材の施用あるいは堆肥の利用などを計画する必要があります。

イタリアンが減少
イタリアンが減少し、春雑草が増加



S牧野
 主な草種がレッドトップ、ベルベットグラス、野生リードカナリーグラスになっていますが、毎年必ず刈り取り作業を行うことで草地としての機能は維持することができています。年2回の刈り取りを実施すると、餌としての栄養や食い込みも向上すると思われます。

IK牧野
鹿による食害がひどいために、草丈は10㎝程度しか伸びていません。例年通り2回刈り取りができるかどうか心配されます。少なくとも年1回は確実に収穫をあげるための管理法を工夫する必要があるかもしれません。実際にどの程度鹿による採食が起こっているのか確認する必要もあるかと思いますが、春先の食害がひどいことは明らかですので、春先の成長をやや抑えて、周辺の野草が生育を始めたころから牧草がしっかり成長できるように、施肥の量と施肥時期を検討してみることも一つの対策かも知れません。施肥に迅速に反応できるように土壌の酸性化改良も考慮が必要です。
牧草の増収が必要であれば、ヨモギが優占している部分について、簡易更新による牧草の追播を計画してもいいのではと思います。

シカ食害
シカ食害が深刻



G牧野
鹿の食害がひどく、放牧地のような草地の状態になっています。板切と同様、鹿対策を検討する必要があります。土壌の酸性化による春先の牧草の生育不良も起こっていると思われます。土壌の改良や施肥による春の生育促進と鹿の採食の程度との関連がどの様なバランスになるか、管理の改善が食害を差し引いた増収をもたらすか、確実な見通しをもつことができていません。春先の食害を避け周囲の野草が成長を始めるころから牧草も伸ばすというような方法が効果があるかなど、試験場や振興局の方々と十分検討する機会を持ちたいと思います

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