2016年第1回草地調査

 2016年5月9日、10日に1番草の調査を行いました。例年より約半月遅い調査でした。前年までのデータと直接比較することはできませんが、全体としての印象は、各草地とも順調に成長していると判断されました。

1.地震の影響について
今回の地震で、草地への道路側面の崩壊が起こった牧野があり、通行が危険な状況が続いています。草地内の土壌隆起や陥没は今回の調査では見ることはありませんでしたが、今後、梅雨に入って大量の雨で土砂の流亡、崩壊が起こる可能性は十分念頭に置いて作業を行っていただきたいと思います。

2.堆厩肥散布の効果
堆肥を散布した草地の牧草の成育が非常に良好なことが印象的でした。これまで裸地が目立った部分も堆肥散布で土壌酸性害が軽減され、牧草の成長が順調に進んでいます。
現在、堆肥散布が牧草の成長に良好な効果を見せていますが、今後、堆肥の施用量には十分注意を払う必要が出てくると考えています。過剰な堆肥施用は牧草への硝酸態窒素蓄積を引き起こし、牛の採食量の減少、中毒の原因となる可能性に十分注意しましょう。牧草の色が暗緑色になっている場合は硝酸態窒素の蓄積を疑う必要があります。
根から吸収された硝酸態窒素は光合成産物からつくられたショ糖を使ってアミノ酸、タンパク質に合成されていきますが、窒素肥料や堆肥の過剰施用などで硝酸態窒素が非常に多量に根から吸収された場合や雨天続きで光合成が低下し、ショ糖の供給が不足する場合は、硝酸が植物体内に牛の中毒レベルまで蓄積することがおこります。
硝酸態窒素がどの程度牧草にたまっているかは、正確には所定の機関へ硝酸態窒素含量の測定を依頼するか、測定キットによる定量が必要です。
簡易の評価として、草地での現場判断には以下の方法を用いています。牧草の茎を根元から切り取り、株の基部部分を口でよく噛んで見ます。草の種類によって最初はややにがい味がしますが、次第にわずかな甘みを感じるようになります。この甘みはショ糖の味を感じていることになります。甘みを確認できたら、牧草体内の硝酸を加工するのに必要なショ糖に余裕があり、硝酸が貯まる状況ではないと判断し、この甘みを感じることができない場合には、植物体内での硝酸蓄積の可能性を疑う必要があると思っています。

3.草地の施肥計画について
窒素、リン酸、カリなどを年間どの位、どの時期に施用するかは、県の草地管理指針の活用、担当者の助言で実施されているところが多いと思います。
今年の1番草では施肥量が今までより少ないと思われる草地がいくつかありました。牧草の収穫目標、何番草を重点にするか、土壌分析結果などの牧野の利用方針にもとづいて、施肥量を計画的に節減することは大いに推奨できます。1番草についても収量を求めるより牛の好みが良い草をという考え方で窒素をやや減らして、リン酸重点という施肥を考えることも可能ですし、倒伏を避けることを重視して肥料を減らすという場合もあると思います。草地をどう使うかを牧野組合で明確にして、施肥計画を立てることが望まれます。
4.病気の発生について

一部の草地で、斑点病と思われる病気が発生しています。病名の特定と発生経過を明らかにしていく必要がありますし、今後の経過を慎重に観察したいと思います。病気の発生には気温や雨量などの気象要因、刈り取りや施肥と関連する草地群落内の環境条件、罹病した牧草草種の遺伝的耐性などが考えられますので、一時的、局所的な発生なのか、発生が継続するか、蔓延する要因があるかどうかを検討していく必要があると思われます。