石若礼子・増田泰久(久住 牧野の博物館)
2012.08.19
カヤネズミがイネ科草本群落に造る空中巣には、繁殖巣として造られる球巣の他に多様な形態の巣がみられます。前報では空中「カゴ状巣」および「もつれ糸状巣」をカヤネズミが利用する様子を示しました。
カヤネズミは空中巣だけではなく、冬季には地表にも球巣を造ることが知られています。筆者らのカヤネズミの営巣行動調査では、地表巣は冬季だけではなく、かなり広い季節にわたって造られることを観察しています。
本報では、夏季に造られた地表巣の利用例を示し、植物群落内の地表面がカヤネズミの生活の場として重要な意味をもつことに注意を喚起したいと思います。今までのカヤネズミの研究では、地表面の状態についてはほとんど関心が向けられませんでしたが、今後は、土壌の乾湿度、リターの状態、餌となる地表の種子の量や昆虫の生息状態に注意を払いたいと思います。
2012年8月10日15時15分~11日13時50分までの間、チガヤ群落地表面を監視カメラで動画撮影しました。撮影は小型白黒暗視カメラ(MK-323型 f=3.6mm)、画像記録はSDカードレコーダーAD-S20型(キャロットシステムズ(株)製)を用い、被写体の動きが検知された場合に録画するモーション録画で記録しました(30フレーム/秒)。
撮影期間中の天気は、晴れ時々曇り一時雨、最も近いアメダス(福岡県博多)のデータでは最高気温35.6℃、最低気温24.6℃、降水量12.5mm、平均風速2.5mでした。
放飼したカヤネズミの雄個体がチガヤ群落地表面にネズミムギ、ナギナタガヤ、チガヤ、セイタカアワダチソウ、クスの葉などのリターを集めた「テント状巣」を造っていました。この巣はシェルターとしての機能をもつと推測されますが、巣の中での行動は観ることができないため、巣の出入りの時刻を記録しました。
カヤネズミは監視撮影時間1355分の23.1%の時間、313分をテント状巣で過ごしました。15時から17時近くまでの78分(途中1度出入りあり)、朝5時から9時近くまでの3時間49分は巣に入って動かず、寝ていたものと推測されます。
地表テント状巣におけるカヤネズミの行動
動画をご覧下さい(タイトルをクリックするとWindows Media Playerで再生されます)。
*動画ファイルを数枚結合していますので、動作が不自然な部分があります。
地表テント状巣で昼寝
地表テント状巣で雨宿り