石若礼子・増田泰久(久住 牧野の博物館)
2014.03.16

 カヤネズミが球状の繁殖用の巣を造ることはよく知られています。しかし、それ以外にも当ホームページで紹介しているように様々な形態の巣を造ります。これらの巣は造りかけあるいは壊れた巣と認識されてきました。多くの観察例の中には、休息するのはちょっと無理と思えるような形態の巣で、1日のかなりの部分を過ごしたり、その上で寝たりしている例もあります。そのような巣で熟睡する個体が巣から転げ落ちる動画も掲載しています(この様子は3例動画撮影しています)。さらには造った球巣をただ通り抜けるだけを繰り返す雌の行動も数例観察しています。
植物群落を立体的に利用するカヤネズミは、雌雄の遭遇機会を増し、個体間の通信機能を持つマーキングを行っていて、その手段に巣が使われているのではないかという仮説を立てています。
 この仮説を立証する試験をいくつか行い、その概要を日本生態学会広島大会で発表しています。その詳細は後日本報に掲載したいと思います。
このいくつかの試験の中で、雄あるいは雌が造った巣の一部を野外の植物に着け、野生個体がそれに反応するかどうかを動画観察してみました。雄あるいは雌の巣の一部をススキ株の中層に午後3時頃着けたところ、その日の日没後に野生個体がやってきて,盛んに臭いをかいだり、噛んだりする動作が観察されました。

巣を付けた位置
巣材を着けた位置

巣材に接近する野生カヤネズミ(19.5MB  3分21秒)