石若礼子・増田泰久(久住 牧野の博物館)
2013.11.30

 カヤネズミはイネ科草本群落などに空中球状巣を造るとともに、地表にも巣を造ることは、Ishiwaka et at. (2010)および石若・増田 (2012)で報告しています。筆者らは、イネ科草本群落内に野外ケージを設置し、カヤネズミを放飼して、営巣行動を詳細に調査していますが、2013年は11月6日に今季最初の地表巣が造られました。この地表巣をカヤネズミがどのように使っているのかを明らかにするため動画撮影を行いました。

 チガヤ群落に設置したケージに放飼した未経産雌が、2013年11月6日に地表にカゴ状巣を造り、それが11日には球状になりました。試験地に最も近いアメダス観測地点(福岡県博多)の11月6日の平均気温は16.6℃、最高気温は22.9℃、最低気温は10.0℃、11月6日の平均気温は11.8℃、最高気温は14.9℃、最低気温は9.3℃でした。なお、試験地に設置した温度計によると、試験地の最高気温はアメダス地点より1~1.5℃高く、最低気温は約2℃低い値となるようです。

 11日に球状になった地表巣は次第に壁・屋根の厚みが増し、床も厚くなり11月26日には写真1に示すような様子になりました。巣の呼称については、外形、構造などに基づく検討を要しますが、形態的には球状巣と考え、地表球状巣と呼ぶことにします。出入り口は2カ所あり、南側のそれはかなり大きな円状になっています。

地表巣
写真1

 2013年11月26日15時00分~27日11時12分までの間、地表球状巣の南側の出入り口を監視カメラで動画撮影しました。また、日中13時~15時のカヤネズミの行動については、ほぼ毎日の観察で情報を得ています。

 撮影は小型白黒暗視カメラ(MK-323型 f=3.6mm)、画像記録はSDカードレコーダーAD-S20型(キャロットシステムズ(株)製)を用い、被写体の動きが検知された場合に録画するモーション録画で記録しました(30フレーム/秒)。

 撮影期間中の天気は、曇りのち一時雨で、アメダスのデータでは平均気温10.5℃、最高気温11.0℃、最低気温8.3℃でした。また、11月26日の日の入りは17時11分、27日の日の出は7時01分でした。

カヤネズミは監視撮影時間1212分の11.9%の時間、144分を地表巣の中で過ごしました。しかし、10分以上の連続した巣の滞在は、9時から17時の日中に限られ、夕、夜間および朝はケージ内を動きまわっていました。夕、夜間および朝の巣の利用は、16時台に3回、17時台に4回、5時台に4回、6時台に9回、7時台に17回と日没前後および日の出前後に頻繁に通過する行動が観察され、それ以外の夜間の時間帯では、18時台、20時台、21時台および2時台にそれぞれ2回、23時台および0時台にそれぞれ1回の巣の通過が撮影されました。

地表巣を出入りする未経産カヤネズミ(再生時間2分03秒、サイズは13MB)

文献
Ishiwaka, R., Kinoshita, Y., Satou, H., Kakihara, H. and Masuda, Y. (2010) Overwintering in nests on the ground in the harvest mouse. Landscape and Ecological Engineering 6: 335-342.
石若 礼子・増田 泰久 (2012) イネ科草本群落におけるカヤネズミMicromys minutus の営巣習性. (日本哺乳類学会2012年度大会) https://www.kuju- ecomuseum.org/honyuruigakkaiposter.pdf