久住 牧野の博物館HP記事(2019/12/07)

 土を入れた大型プラスティック容器にススキを移植し、妊娠したカヤネズミに高さ約60㎝の位置に繁殖巣をつくらせました。雌親はその中で10月25日に出産し、育仔を続けていました。
 幼獣の12日齢時に親仔を飼育ケージに回収する作業を行いました。その際、雌親が水やりなどでできた土中の坑道に逃げ込んだため、掘削しながら捕獲を試みました。坑道を掘り開けていくと、図1の位置に写真1、2のような巣を発見しました。
巣は外層がススキの緑葉を裂いて作られており、内層には枯れた茎葉および床にあったワラを細かく裂いたものが使われていました。
回収前日に撮影した動画には、雌親が盛んに巣材を集め、土中に運び込む動きが撮影されていました。
 カヤネズミは土を掘ることはないと考えていますが、野焼きの時に、他種のネズミなどが掘った穴に逃げこんでいるのでは、という指摘はされていますし、飼育下で土にできた穴に入る行動は観察したことがあります。しかし、土中の坑道につくられた巣を確認したのは初めてです。なお、観察地の気温は、分娩後5日程度は日平均気温15℃、最低気温10℃前後でしたが、その後次第に低下し、地中巣発見日にはそれぞれ10℃、-2℃になりました。地中巣をつくる条件は未だ何もわかっていませんが、気温も関連があるかもしれません。