2013年第3回草地調査
2013年第3回の草地調査を、9月10、11日に行いました。この夏は、かってない高温傾向、8月中旬の乾燥、下旬の長雨と、牧草の生長にはかなり厳しい条件が続きました。その影響が3番草の生長にみられるか、また、梅雨明けが早かったために2番草刈取りが例年より早くなったことが、草地にどのような影響を及ぼしているかに注意を払いながら調査を行いました。
1)2番草調査結果で述べた点について
①イタリアンライグラス-夏型1年生イネ科草交代草地の場合
2番草調査結果では、「来年の草地に生長するイタリアンの種子が確実に落ちた(落ちる)でしょうか?・・・高標高のイタリアン主体草地の来年の生産に今年の2番草早刈りがどのような影響を及ぼすかに注目し、今後の草地管理に生かす必要があります。」と書きました。3番草の状況を見た結果、2番刈りが早かったためにイタリアンが再生・結実し、枯れた様子が確認できたこと、3番草の中で9月初旬現在出穂し種子を着けている個体も確認できたこと、などから今年の早い2番刈り条件でも、来年のイタリアンの生長に必要な種子は落ちたと考えられます。しかし、「来年の生産の主体になるイタリアンの3番草刈り取り後の発芽・生長時期に天候などが不適な環境になった場合には、個体数が不足し、来年の1番草の減収を引き起こす危険性があることは念頭に置いておく必要があります。」
②オーチャードグラスなどの寒地型多年生イネ科草が多い草地の場合2番草調査結果では、「早い梅雨明けに伴う2番草の早刈りは、夏枯れによる大きな再生障害を引き起こすことはないのではないかと考えます。」と述べました。全般的にオーチャードグラス、特にトールフェスクの生長は順調で、2番草早刈りの結果、高温期を迎える前に刈取り後の再生時の危険期を乗り越えられたと推測しています。
2番刈りが早くなったために3番草の生長も例年より早く、既に3番草を刈り取ったところもあります。このような場合には、秋の利用を控えるASP(秋期備蓄草地)方式のように十分再生させることができれば、草地内に増えているイタリアンの発芽を押さえ、オーチャードの優勢を保つことができる効果が期待できます。
2)今年の夏の天候条件で、イタリアン後のメヒシバ・イヌビエの生長は旺盛でかなりの多収が期待できます。
3番草の草種構成としてメヒシバが主体になるか、イヌビエが主体になるかは、それぞれの発芽に適した条件がいつ整うかに関連していると推測していますが、まだ明確にはなっていません。3番草の状況から今年のように2番刈りが早い条件ではどうやらメヒシバの割合が高くなる傾向があるように思われます。
ある草地で、旺盛に生育したメヒシバ主体の3番草を見ながら農家の人から話を聞いたところ、2番刈り後は追肥していないとのことでした。2番刈り後の追肥を節約して、3番刈り後のリン酸や石灰の追肥にまわすのも優れた工夫だと思います。2番刈り後の追肥は、メヒシバの早い倒伏につながりやすいし、イヌビエの嗜好性を上げるためには窒素を少くするのも有効と思われます。
3)利用農家が減少し、草地の利用・管理が大きな負担になってきた牧場がでています。従来の常識や草地管理指針にとらわれずに牧場の実情に合わせた方法を工夫し、永続的な草地の維持が可能となるよう支援する態勢をつくることが急務です。
広い牧野を農家1戸で利用管理する状況も生じています。今重要なことは何とか牧場の利用を続けながら農業に生きられるように、行政も技術・研究者も力を合わせることだと思います。従来の年3回刈り取りを2回にする、施肥を重点的にして肥料代・燃料費を節約する、条件を整えて採草利用を放牧利用に変更する、草地の草を手抜きができる草種に切り替える、さらには年1回刈取りだけでも草地を維持できる方法を探る、などなど知恵を出し合っていかなければならない状況を迎えています。個々の牧場の実情に合わせた草地の利用・管理法を牧場毎に相談しながら見いだす機会を設けることを提案します。
4)草地の利用ができない状況になっている牧場については、採草あるいは放牧で利用したい農家をつのり、草地の利用を斡旋・調整するシステムを整備することを提案します。