2020年第3回草地調査
I牧野
収穫の主体になるイヌビエは順調に生育しており、色も良好な状態です。9月中の収穫で十分な収量が得られると思われます。9月末になるとイヌビエは実を充実させ栄養価としては低下してきますが、夏を越すタイプ(越夏性)のイタリアンライグラスも混ざって生育しているため、収穫したロールベールの栄養価はやや向上すると思われます。 土壌分析の結果を見ながら酸性化を防ぐよう、今後も焼却灰、堆肥の散布を計画してください。
C牧野
イヌビエが非常に良好な成育をしているために、エゾノギシギシなどの雑草を抑えることができています。9月中の刈り取りを行うことができれば、来春のイタリアンライグラスも順調に発芽・生育することができます。現在の草の生育状況には土壌の酸性化によって起こる害は認められませんが、少なくとも2~3年毎に焼却灰あるいは堆肥散布ができれば草地を良い状態で維持できると思われます。
T牧野
現在草地の主体になっているイタリアンライグラスは、ペレニアルライグラスとの交雑で作られたハイブリッド系の株で数年生き続けるタイプで、栄養価は比較的高いのですが、草高はあまり高くならない性質があります。したがって、収量を確保するためには密度を高く保つ必要があります。更新後オーチャードグラスやトールフェスクが枯死した後の隙間が空いているため、ギシギシやオオバコが侵入しイタリアンライグラスの密度はやや低下しています。イタリアンライグラスの密度を上げるためには種子を落とし、種子が発芽成長する機会が必要です。ハイブリッド系イタリアンライグラスの場合は、10月刈りで利用できますが、密度増加のためには2年間くらいは3番草を9月中に刈り取ることが必要だと考えられます。土壌の酸性化も発芽成長を阻害しますので、秋のお礼肥あるいは早春の春肥での石灰資材やリン酸肥料の施用あるいは焼却灰、堆肥の施用が密度回復に有効だと思います。
NK牧野
トールフェスクが主体の安定した草地になっています。しかし、株間をヌカボ、ヨモギなどが埋めているため、土壌酸性化が進んだり、刈り取りができなかったりすると株間の雑草が勢いを増す可能性があります。特に、背の低いヌカボが勢力を拡げると収量の著しい低下につながります。今後も確実な刈り取りを継続するとともに、土壌の酸性化によるヨモギ、イタドリ、ヌカボの増加という草種割合の変化と収量低下に注意しながら利用管理を続けてください。
NS牧野
ワルナスビの割合は毎年増加しており、ほぼ草地全面に拡がっています。この草地の利用管理法としては、ワルナスビの種子を落とさないことおよび発芽可能な種子を草地外に運び出さないことを最も重要な管理利用法とせざるを得ません。2番刈り取り時までに種子が落ちた可能性は無いと思われますが、再生後、9月10日現在で開花盛期から一部は種子の充実が始まった段階です。通常の3番草刈り取り時(9月末)までには相当数の発芽可能な種子が形成されるものと考えられます。したがって、ワルナスビを種子で拡散させないという草地の利用法としては、1番草および2番草は通常の刈り取りを行い、収穫するが、3番草は収穫を目指すことなく、9月中旬に掃除刈りを行う、にせざるを得ないのではないかと考えます。
Y牧野
調査した草地は、既に更新作業が終了し、発芽が確認されます。草地内の傾斜の均平化で今後の作業効率は高まり、酸性化が進んでいた土壌も改良され、今後数年の草地生産に貢献すると思われます。しかし、播種したオーチャードグラスはまだ発芽が十分ではなく、落ちていたイタリアンライグラス種子が既に発芽成長を始めており、来春は元の草地と同様のイタリアンライグラス優占草地になると考えられます。
IM牧野
今後の利用方法を決める必要があります。イタリアンライグラスとメヒシバあるいはイヌビエで収穫を上げるという考え方をとるならば、今年はかなりのイタリアンライグラスが種子を落としているので、9月中に収穫あるいは掃除刈りができるならば、来春はイタリアンライグラス主体の草地に戻る可能性は高いと思われます。
簡易更新などの方法を用いてオーチャードグラスなどの牧草を導入することも考えられますが、土壌の酸性化が進み、リン酸欠乏も明らかですので、まず、石灰質資材あるいは堆肥などを用いた土壌改良が不可欠です。
O牧野
2番草の刈り取りがやや遅くなったために、リードカナリーグラスの成長はかなり遅れていますが、密度は十分でギシギシなどの雑草の侵入はほとんど認められません。3番草刈り取りが10月の遅い時期になっても、草地には全く問題ありません。苦土石灰の施用は適切で、来年以降の牧草の増収と牛の採食量改善に効果があると考えられます。
IH牧野
2番草刈り取りがやや遅くなり、刈り取り後、高温が続いたためにオーチャードグラスにかなり夏枯れが発生しています。オーチャードグラスの回復には3番草の刈り取りをできるだけ遅くすることが有効ですが、収穫の多くの部分を占めるイタリアンライグラスやメヒシバあるいはイヌビエの成長を確保する必要があります。そのためには、来春のイタリアンライグラスの密度を確保することを重視し、9月中に刈り取ることが必須です。今後の利用管理法としては、イタリアンライグラスの収穫量をどれだけ高めるかがポイントになります。春肥の重点的な施肥と9月中の刈り取りを重視するのが有効と考えられます。
U牧野
オーチャードグラスは夏枯れした株があり、株間にリードカナリーグラス、レッドトップ、チカラシバなどの雑草が増えてきました。オーチャードグラスが主体だった時は10月刈り取りが適切でしたが、イタリアンライグラスの収穫割合が増えてきましたので、収量を確保するためには9月中の刈り取りを行う必要があります。堆肥の施用は土壌酸性化の対策として非常に有効で、イタリアンライグラス草地やオーチャードグラス・トールフェスク主体草地で密度が高い場合には大きな効果が認められますが、株間が空いてしまった草地では、堆肥によって運ばれたと思われるイヌビエやアレチノギクのようなキク科雑草の繁茂の引き金になる場合があります。
TK牧野
オーチャードグラス、トールフェスクの株が良好な成長をしています。イタリアンライグラスが多かった部分にイヌビエが増加していますが、イヌビエなどの割合を増やさないためには、夏までに成長するイタリアンライグラスの割合を抑えることがポイントです。イタリアンライグラスを抑えるためには、3番草刈り取りを10月中旬以降に遅らせることが重要です。これはオーチャードグラスのためにも株の充実効果があります。土壌の酸性化はオーチャードグラスに対してイタリアンライグラスより大きな影響を及ぼすようですので、土壌分析の結果を見て石灰質資材、リン酸資材の施用するのも効果があると推測されます。
A牧野
ほぼ全面がイタリアンライグラス-メヒシバあるいはイヌビエ草地になっています。収穫量を確保するためには、1番草で確実にイタリアンライグラスを成長させることが重要です。イタリアンライグラスの密度を確保するためには、十分な種子発芽を保証する必要があり、そのためには9月中の刈り取りが必須です。ベルベットグラスの増加を抑えるためにも、イタリアンライグラスの発芽を確保し、春肥の施用によって十分成長させることが重要です。
S牧野
ベルベットグラスの地上部はほぼ枯れて、リードカナリーグラスが主体になっているようにみえます。今年は、もう一度刈り取るか刈り取らないかは、草地の状態に大きな影響を及ぼさないと思われます。刈り取りを行わないならば、リードカナリーグラスの成長にプラスに働きますので、来年は、リードカナリーグラスの割合が増加することになると思われますが、来年の1番草、2番草にはまだベルベットグラスは高い割合を維持すると考えられます。
IK牧野
災害前に1回目の刈り取りを済ませていたことが、草地の維持には非常によい結果となりました。今秋もう一度刈り取りができるならば、来年の1番草のためにはプラスの影響が期待できます。しかし、作業環境、労力などの影響で、もし刈り取りができない場合でも、草地には極端な悪影響はないと思われます。
G牧野
草地の地力が低く、土壌の酸性が強いために、酸性に耐性の高い雑草(チカラシバ、カゼクサ、ススキなどの割合が大きく増えています。また、草の株化が激しく、表土が一部流亡しているために、草地表面の凹凸が大きくなっており、機械作業が困難な状態になっています。今後の利用法を検討すべき段階に来ていると思います。