2016年第3回草地調査
2016年9月8日、9日に3番草の調査を行いました。
1.3番草の生育状況について
今年の梅雨明けはほぼ例年並みで、2番草の刈り取りも多くの草地で7月中旬から実施できたと思われます。その後の天候も牧草の生長にとってほぼ順調に経過し、3番草は平年並みの収穫量が期待できそうです。しかし、1番草でイタリアンライグラスが主体であった草地は、今年の3番草は一部の草地を除きメヒシバがイヌビエより多い傾向があります。イヌビエの割合が少ない草地の場合は収穫量が減少する可能性があります。また、メヒシバ主体の場合、倒伏などによる収穫ロスも多量に発生する可能性もあります。
2.3番草刈り取り後のお礼肥について
土壌分析の結果は、ほとんどの草地でカルシウム(Ca)の不足が認められ、土壌の酸性化が進んでいます。鶏糞焼却灰の施用で、改善は見込めますが、焼却灰の効果は非常にゆっくり現れてきます。酸性化が酷い草地の場合には、炭酸カルシウム(炭カル)、あるいは苦土石灰の施用が有効です。
堆肥の散布は土壌酸性化で起こる害、特にアルミニウムによる根の生育障害を軽くする効果があります。また、堆肥の施用により土壌が固定していた成分を牧草が利用できるようにする効果はあります。しかし、堆肥からのカルシウム、苦土、リン酸などの養分供給を大きく見込むことはできません。土壌分析の結果を見ながら、これらの成分は施肥で補給することも計画する必要があります。3番草刈り取り後のお礼肥で苦土石灰、熔リンなどの施用を検討してみてください。
3.更新草地の更新翌年からの管理について
更新した草地については、オーチャードグラスのアルミニウム害、リン欠症状、土壌流亡などについての対策を検討してきましたが、更新後2,3年もたたずにイタリアンライグラスが優占し、3番草はメヒシバ・イヌビエになる従来からの傾向がなくなったわけではありません。
更新時に、土壌にあった種子を耕起・鎮圧後、発芽させ、除草剤で処理した後に牧草を播種する工法が採用されるようになり、急速にイタリアンライグラスへ移り変わる草地は少なくなりました。しかし、最近の多くの更新草地でもイタリアンライグラスの成長が確認されています。更新草地におけるオーチャードグラスの成育不良傾向は、イタリアンライグラスとの競争力があまり高くないことを意味しています。
オーチャードグラスの株数があまり減少していないうちにイタリアンライグラス対策を考える必要があります。イタリアンライグラスは発芽適温の気象条件で、刈り取り後に明るくなった草地で、地面に落ちている種子が一斉に発芽してきます(通常は9月末から10月初旬)。現在のところ、秋の最終刈り取り(3番草刈り取り)時期を10月中旬以降にすることで、イタリアンライグラスの発芽機会を減らすことがイタリアンライグラス抑制の有効な方法です。
稲作、畑作、草地などの毎年決まった農作業の中で、作業日程を変更することは非常に困難ではありますが、更新後の草地の状況変化に応じて、草地の作業時期を変更することを検討してください。
4.ワルナスビ防除対策に関連して
昨年の更新時にワルナスビの防除を重点に作業を進めた例があります。その後の調査の経過から、ワルナスビ対策のポイントとなる点を確認しておきます。
①耕起前の薬剤処理で地上部は枯れたが、地下部が生き残っている株の割合はかなり高く、それらの株が耕起・砕土・整地の作業過程で切断されます。ワルナスビはかなり細かく切られた地下部から萌芽する高い能力をもっており、牧草の播種後に芽を出してくるのが観察されます。これらの萌芽をできるだけ確実に枯死させるために、葉を拡げてきた時点で有効な薬剤処理が必要になります。
②更新翌年は、更新前までに落ちて土に埋まっていた種子が気温の上昇とともに発芽し、成長してきます。これらの発芽個体に対しては、結実前に(通常は2番刈り後)枯らすための薬剤処理が必要になります。 かなり多くの草地で強害雑草となりつつあるワルナスビ対策には、やや長期的で丁寧な防除作業が要求されます。何よりまず侵入個体数が少ないうちに発見、抜き取りの対応が有効なのかもしれません。