2014年第3回草地調査

2014年9月16日、17日に3番草の調査を行いました。今年は梅雨明け後、晴天の日が続くことがなく、連日のように雨が降ったりやんだりを繰り返し、気温も例年より低い傾向がありました。そのために2番草刈り取りが遅れて8月中旬になったところもありました。
 調査結果の概要は以下の通りです。
1.イタリアンライグラスの越夏
 例年標高800m以上の草地では、株で夏を越し、3番草で出穂し、種子を着けるイタリアンライグラスがかなり観察されます。今年は標高700m位の草地でイタリアンライグラスの越夏が観察され、標高がさらに高い草地では、2番草刈り取り時(7月末)に存在した株のほとんどが夏を越したようです。
 例年の3番草は、ほとんどの草地でメヒシバ、イヌビエが優勢となり、3番刈りはメヒシバとイヌビエで穫れるということになります。しかし、今年はイタリアンライグラスの株が2番刈り後も生き残ったため、メヒシバ、イヌビエの発芽や初期成長が抑制されています。収量という点では、草高が高くなるイヌビエなどが多いほど大きくなりますので、イタリアンライグラスが多くなった草地では、栄養的には高い乾草あるいはサイレージになりますが、3番刈り収量が少なくなる傾向がでると思われます。
 また、例年の1番草は、前年の秋の3番刈り取りの後に発芽・成長したイタリアンライグラスが成長したものですので、発芽時の天候や冬の寒さの影響を受け易く、また、春の成長や密度も天候により大きな影響を受けることがあります。今年イタリアンライグラスが株で夏を越した割合が高い草地では、イタリアンライグラスが株で冬を越すために春の成長も速く、1番草収量も増える可能性があります。

夏を越しイタリアン
イタリアンライグラスのほとんどの株が越夏し、
3番草が従来のイヌビエからイタリアンになった草地

2.オーチャードグラスが多い草地の状況
 気温が低い天候が続き、オーチャードグラスやトールフェスクの成長も順調です。ただし、2番草の刈り取りが遅れた草地では、オーチャードグラスの株が大きくなり、刈り取ると株と株との間が拡がっていることがわかります。株密度の減少、裸地の増加は、エゾノギシギシなどの雑草の侵入、密度不足による減収につながる恐れもあります。今後の経過を観察し、対応策を検討する必要がでてくるかもしれません。

3.土壌酸性化が牧草の成長に及ぼす影響
 鶏糞焼却灰の利用で、徐々に土壌酸性の矯正が進んでいますが、一方では、土壌の酸性化を進める要因も未だ働いています。酸性雨の影響もあると思われますし、草地用BB肥料(単肥をブレンドした肥料)の窒素源として硫安が使われているものが現在も使用されています。

①酸性化が進み、土壌中に遊離のアルミニウムが増え、牧草の根の伸長が阻害されています。草地で草を握り、引っ張って抜けるようであればアルミの害が出ていると考えられます。浅い根の牧草は、成長が天候の影響を受け易く、施用された肥料だけで成長していますので、土壌の地力を生かせず、成長は肥料の量に敏感に反応します。

②酸性土壌では、施肥したリン酸は、土壌中のアルミニウムなどと結合し、牧草が吸収できない状態になります。リン欠乏による、下葉から茶褐色になり、枯れ上がる現象が刈り取り後再生の早い時期からみられます。

③酸性土壌で植物が吸収できなくなり、欠乏症状が出る可能性がある成分としては、苦土(マグネシウム)があります。久住でも、写真のように葉の葉脈の間が白く抜けるMg欠乏症が見られるようになった草地があります。酸性の矯正と苦土の施用が必要です。

 このような土壌酸性化による養分欠乏傾向は、牧草の生長に悪い影響が及ぶだけではなく、牛の食い込み、健康にも直接影響を及ぼします。昔から言われているように、土を健全にすることは健康な牛つくりの基本です。

Mg欠乏症
苦土不足が疑われる症状