2014年第1回草地調査
2014年4月21日、22日に草地調査を行いました。今年は九州沖縄農業研究センターの土壌関係の研究者と一緒に草地を回りました。
調査結果の概要は以下の通りです。
1.全体的にイタリアンライグラスの成育がやや悪く(標高が比較的低い草地はほぼ順調)、オーチャードグラスの成長は良好な傾向があるようでした。その原因と考えられるのは以下の点です。
○例年にない大雪でかなり長い間草地が雪に覆われる状況が続き、株で休眠して越冬するオーチャードグラスには影響はなかったものの、種子から発芽したイタリアンライグラスの場合には、成長が十分でなかった草地で枯死個体の発生や成長抑制が起こった可能性があります。
○昨年(2013年)の2番草の刈り取りは例年より早い傾向があり、十分に種子が落ちたかどうかが翌年のイタリアンの個体数確保にとって不安材料になることを2番草調査の報告で示していました。3番草調査の報告では、調査時にイタリアンの発芽個体を確認し、あまり心配はないが、秋のイタリアンの発芽・初期成長時に乾燥が続いたり、霜が早く降りるなどの天候不順があれば、翌年に影響が出ることもあると述べていました。今年の春の状況からは、イタリアンの個体数不足の傾向あると思われ、種子不足の影響が出た可能性が考えられます。1番草をイタリアンで穫る草地の場合には2番刈り時における落下種子確保を確実にするためには、7月10日以降の刈り取りが安全であると言えそうです。
○昨年は2番草の早刈りの影響を受け、3番草刈り取りもかなり早くなった草地が多かったようです。昨年の9月中旬までの3番草刈り取りは、今年の1番草の成長にどのような影響を及ぼしたのでしょうか。オーチャードグラスがある草地ではオーチャードグラスの成長が良好なようです。刈り取り後十分成長してから冬を迎えたことで春の成長が旺盛になったと思われます。イタリアンライグラスに及ぼした影響は、前述の種子量が少なかった影響もありますが、通常の9月末からの刈り取りではあまり再生しないメヒシバやイヌビエが3番草刈り取りが早くなったために、かなりの大きさまで再生し、種子量が少ないイタリアンライグラスの発芽や初期成長にさらに悪影響を与えたようです。
2.イタリアンライグラスが消失し、ほぼ裸地状態になった草地が2カ所できました。
2006年に起こったいくつかの草地での裸地化現象が今年も発生しました。両草地とも昨年の2番草で十分種子が落ち、3番草の刈り取りも通常に近い時期だったようですので、イタリアンライグラスの発芽後、土壌の強い酸性によるアルミの害により根系の伸長障害が発生し、乾燥による土壌収縮あるいは霜柱による土壌表層の分離などが起こったために多くの個体が枯死したと思われます。石灰の施用、鶏糞焼却灰の利用により土壌酸性の矯正が重要です。
3.2013年秋に更新した草地は、草地の一部に裸地が発生しているのが確認されました。 更新草地における裸地の発生原因は少しづつ明らかになってきましたが、未だその対策が確立していません。土壌学研究者の協力を得て対策をできるだけ早く提案したいと考えています。
4.リードカナリーグラス草地へのイタリアンライグラスの追播き
リードカナリーグラス主体の草地に昨秋イタリアンライグラスを播種したそうです。リードカナリーグラスは春の成長速度がやや遅く、リードカナリーグラス主体草地では1番草の収量がやや低い傾向があります。私たちの試験ではリードカナリーグラスに自生イタリアンライグラスが混生することにより著しく増収することが認められています。しかも、2番草、3番草はしっかりリードカナリーグラスで収量を上げられるので、優れた草地利用法だと考えています。今後の草種構成の変化に注目していきたいと思います。なお、市販イタリアンライグラスの場合は自然下種で毎年イタリアンライグラスが継続することはない場合が多いようですので、毎年追播する必要があるかもしれません。