2012年第3回草地調査
2012年9月10日、11日に行った3番草調査結果の概要は次の通りでした。
1)オーチャードグラスが多い牧場では、例年に比べ、オーチャードグラスの夏枯れはあまり見られず、順調な成長をしていました。
気候的な原因として、7月に雨が多かったことや8月の気温が昨年のような酷暑ではなかったことが考えられます。また、石灰や焼却灰の散布による酸性矯正が1番草の成長を旺盛にし、オーチャードグラスの株がしっかり養分をため充実した効果がでていると考えられます。オーチャードグラスやトールフェスクのような永年生牧草は、株が旺盛に生長し養分を多量に貯ることが永続性を高めるポイントです。酸性の矯正やリン酸の施用は株の充実ひいては夏枯れ軽減にも大きな効果があります。
2)夏型1年生イネ科草(イヌビエ、メヒシバ、エノコログサ)の生長が遅れている傾向がみられます。また、特にイヌビエの割合がメヒシバより低い牧場が多いようです。
3番草の収量にはイヌビエが大きな割合を占める牧場が多いので、メヒシバの倒伏による収穫ロスも考えると3番草収量がやや低下する牧場もあると思われます。
なぜイヌビエの割合が今年は低下したかは明らかではありませんが、いくつかの理由を考えることができます。通常、イヌビエは1番草あるいは2番草の中で、裸地あるいは草が薄く太陽が当たる場所で発芽し、2番草が刈られた後急速に生長します。今年は、土壌の酸性の改善により1番、2番草のイタリアンライグラスの生長が非常に旺盛であったために、イヌビエの発芽機会が少なく、2番草刈り取り後に発芽したものが大部分で、生長が例年より遅れたのではないかと考えられます。また、一昨年は不順な天候で、刈り取りが例年と異なる時期となった牧場が多かったために、イヌビエの種を落とす量が減少していた可能性もあります。
いずれにしても、今年の3番草の刈り取りが例年と同様の時期に実施できる牧場は、来年のイヌビエの割合はほぼ例年並みになると予想されます。
3)3番草刈り取り後の管理について
来年の牧草の生長のために、それぞれの牧場の土壌分析結果に基づいて、土壌改良が必要であるかどうか確認しましょう。必要であれば、お礼肥として今秋施用するか、来年の春肥で施用するか、リン酸や石灰による土壌改良を目的とするお礼肥と窒素やカリを主とする春肥をそれぞれ実施するか、を決める必要があります。牧場の実態に合わせて実施する時期を決めて下さい。オーチャードグラスなどの永年生牧草が多い牧場は、秋のお礼肥が効果的です。イタリアンライグラス主体の牧場は春肥を3月上・中旬に施用するだけでも大きな効果がでます。