2021年4月27日~4月28日に草地調査を行い、概略以下のような状況を確認しました。
I牧場
春の高温傾向と堆肥散布の効果でイタリアンライグラスの成長は順調で、例年よりかなり良好な状態です。イタリアンライグラスの成長が良くなったことと土壌の改良により、酸性土壌に適応した、背が低く、酸性土壌に強く地下茎で広がっていくヌカボはほぼ消えており、草地の収量に悪影響を及ぼすことはなくなりました。イタリアンライグラスの成長がやや不均一で、株間に春の1年生雑草がかなり混じっています。これは昨年の3番刈りが少し遅くなったために、イタリアンライグラスの発芽・初期生長が揃わなかったことと、散布された堆肥による被覆が原因と思われます。しかし、今年の9月末の刈り取りが順調にできれば、来年は問題なく回復することができます。
C牧場
昨秋の堆肥の施用により、イタリアンライグラスの成長は順調です。イタリアンライグラスの株がボコボコと目立ち、株間にハコベなどの1年生雑草がかなり多く侵入しています。原因は散布した堆肥が被って発芽、成長ができなかったイタリアンライグラスがあったためで、その部分に雑草が多く成長しています。草の色等から判断して、現在のところ堆肥の連用による牧草の質の悪化が問題となることはないと考えています。例年通りの3番草の刈り取りができれば、来年は均一な成長をした草地の状態に戻すことができます。
T牧場
夏を越すタイプの交雑種イタリアンライグラスになっていますので、種子からの発芽ではなく、株からの再生で成育しています。したがって、堆肥散布の影響でムラができることもなく比較的均一で密度の高い草地になっています。土壌が未だ酸性に傾いていますので、秋の刈り取り後の石灰質肥料やリン酸質肥料の散布、堆肥散布の効果が大きいと思われます。
NS牧野
年2回の刈り取りが行われることで、草種としてはオーチャードグラス、トールフェスクなどがしっかり残っています。収穫量をどの程度期待するかを想定したうえで、必要であれば3月初中旬の施肥と刈り取り後の追肥量を増やすことで調整してください。1年生の雑草の少ないのが特徴でしたが、堆肥散布が収量と草種構成にどのように影響するか注目したいと思います。
NS牧野
主な草種はオーチャードグラスで、成長も順調です。イタリアンライグラスの割合が増加してきました。ワルナスビは未だ芽を出していませんが、2番草になると株から出芽するものと、種子から発芽する個体がかなり多く混じる可能性が高いと予想されます。オーチャードグラスの割合を高く維持するためには、3番刈りを遅くしたいのですが、ワルナスビの種子を落としてしまいます。去年の3番刈りの時期によっては、今年は種子からのワルナスビが増加することも予想されます。
Y牧野
昨年秋の更新でオーチャードグラスの割合が増えることが期待されましたが、これまでの多くの他の草地の経過と同様に、オーチャードグラスは土壌酸性の害が顕著で、イタリアンライグラスとの競争に負けています。更新でオーチャードグラスの草地にすることはできませんでしたが、今年もこれまでと同様の維持管理を続けることで収量を維持していくことができます。
IM牧野
土壌の酸性化がかなり進んでいますので、石灰質資材あるいは堆肥などの施用が必要です。土壌のアルミの害やリン酸欠乏のために、根が極端に浅くなっています。土壌の酸性が強いために、播種した牧草の成育が悪く、酸性に強いヒメスイバやヌカボなどの、収量を上げることができない雑草が増えています。
O牧野
リードカナリーグラスが安定した草地を作っています。1番草の立ち上がりがやや遅い傾向がありますが、秋の追肥と春肥施用ができれば1番草収量は十分確保することができます。
IH牧野
前年の苦土石灰の施用効果、昨年の施肥効果が出て、成育は良好です。草地の主な草がイタリアンライグラスになっているので、現在の維持管理を継続し、春肥を重点に施肥を行うことと、3番草の9月中の刈り取りを実行すれば、安定した草地として維持することができます。
U牧野
堆肥の効果と10月中旬の刈り取りの効果で、オーチャードグラスの勢いが回復し、イタリアンライグラスの割合が減りました。ただ、オーチャードグラスの個体数が増えたわけではありませんので、株間に様々な雑草が入っています。堆肥や施肥の効果がある間はオーチャードグラスが優勢ですが、管理の手を抜くと株間のエゾノギシギシ、レッドトップ、野生リードカナリーグラス、イタリアンライグラスなどが優勢となってくることに留意しておく必要があります。
TK牧野
土壌改良材や堆肥の施用により施肥の効果が十分に発揮され、オーチャードグラスの成長は非常に良好です。目立っていたベルベットグラスもかなり抑圧されています。今後は株化が進む傾向が出てくると思われますので、それへの対応を考えておくことが必要になるかもしれません。
A牧野
オーチャードグラスとトールフェスクの株が消えた場所にイタリアンライグラスが入っていますが、今年はイタリアンライグラスの成長も順調です。標高がかなり高い草地ですので、できるだけ9月中の刈り取りができるようにすると、安定した草地生産が維持できると思われます。
S牧野
主な草種がレッドトップ、ベルベットグラス、野生リードカナリーグラスになっていますが、毎年必ず刈り取り作業を行うことで草地としての機能は維持することができています。堆肥が施用されていますので、酸性土壌に強く、草丈が低いヌカボの成長がかなり抑えられて、収量は上がると期待されます。
IT牧野
鹿による食害を抑えるために、春肥の時期を遅らしたために、草丈の伸びは未だ十分ではありません。しかし、春先の鹿の食害を避けるというねらいはかなり成功しているようです。2回刈り利用ですので、春肥の効果もこれから出てくると思われます。
G牧野
取り付け道路の災害のため昨年は利用ができなかったために、ススキなどの野草の侵入がかなり進んでいます。採草地としての利用はかなり困難な条件があるために、今後の利用法は改めて見直さざるを得ないのではないかと考えます。