久住 牧野の博物館

2018年第3回草地調査

 今年の7、8月は平年と比べると全般的に高温傾向で、雨も比較的少なかったようです。9月10、11日に行った生育調査の概要をまとめてみました。

越夏性のイタリアンは少ない

 イタリアンライグラスとメヒシバ・イヌビエの交代草地では、3番草の成長は順調で、平年並みの収穫が予想されます。昨年に比べ越夏したイタリアンライグラスの割合いも低い草地がほとんどでした。そのため、3番草の刈り取りは10月中旬までに終わらせて、来年一番草になるイタリアンライグラスを十分発芽させることが重要です。

 今年の高温傾向は、メヒシバ・イヌビエの成長を促進したのに対しオーチャードグラスにとっては厳しい環境だったといえそうです。いくつかの草地では夏枯れを起こしたのではないかと推定される成長の減退が見られました。

 オーチャードグラスの成長に影響する要因は、夏の気温の他にもいくつかありますので、オーチャードグラスの割合を出来るだけ保つことをねらう草地では以下の点を総合的に考慮して管理を実施してください。

ベルベットグラス、イヌビエ、メヒシバ等の割合が増加

〇オーチャードグラスは他の牧草やベルベットグラスのような雑草に比べ土壌の酸性化やそれに伴うアルミニウム害に弱いため、次第に勢力が衰えてきます。まず、土壌改良効果のある資材(石灰質肥料、リン酸肥料あるいは堆肥など)を計画的・継続的に施用する必要があります。

〇特に、酸性化に伴うアルミニウム害によって根が浅くなっている草地では、夏季の乾燥障害や吸肥力の低下による成長減退が起こることを避けるために、酸性改良と堆肥などによるアルミニウム害の軽減を図る必要があります。

〇1番草および2番草でイタリアンライグラスの割合が増えてきた草地、3番草でメヒシバ・イヌビエの割合いが高くなってきた草地では、3番刈り(その年の最終刈り取り)を10月中旬以降にするよう草地の作業体系を見直す必要があります。稲作作業などの他の農作業の日程との調節が難しい草地の場合には2回刈り利用にする、3番草は初冬まで伸ばして利用(放牧あるいは採草)する。また、放牧草地への転換が可能であれば採草と放牧の兼用地とすることも対応策の一つです。

 いずれにしても、9月末から10月初旬頃に刈り取りによって草地を明るくすることは、イタリアンライグラスの発芽を保証してしまうことになり、イタリアンライグラスは年々増加することになります。牧場の実情に合わせた管理法を取り組んでください。

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