久住 牧野の博物館

2015年第3回草地調査

 2015年9月8日、9日に3番草の調査を行いました。去年の梅雨明けは早かったものの、晴天が続かず、気温も低めの日が多く、やや不順な夏になりましたが、今年は梅雨明けが遅れ、8月上旬以降は雨の多い天候となりました。ほとんどの草地で2番草の刈り取りが例年より遅れました。

1.3番草の刈り取り時期について
 2番草の刈り取りが遅れたことと、お盆以降の天候不順でオーチャードグラス、イヌビエ、メヒシバなどの生長が少し遅くなっています。今後の日照や気温がどのようになるかで違ってくるとは思いますが、例年並みの収量をあげようとすると刈り取りは10月に入ってしまうと予想されます。この場合、来年の収穫に影響が出る可能性がありますので、次の点を考慮に入れて刈り取り日程を決める必要があります。

○1番草のイタリアンライグラスで収穫をあげている草地の場合
  来年春の1番草になるイタリアンライグラスを順調に発芽、生長させるためには、発芽に適した気温の頃に草地が刈り取られ、地面に落ちて  いる種子に光が当たることが必要です。イタリアンライグラスの発芽適温時期は9月下旬から10月上旬頃ですので、この間に3番草が刈り取られる必要があります。標高の高い草地では、できるだけ9月中に刈り取るのが安全だと思われます。今年のように3番草の成長が遅れて収穫量が少なくなるとしても、来年以降のことを考えると、例年通りの刈り取り日程で作業を進めることが望ましいでしょう。
○オーチャードグラスが多い草地の場合
 オーチャードグラス、トールフェスクが多い草地でも、イタリアンライグラスが侵入している所がありますし、現在は目につかなくても今後侵入して拡がる可能性は高いと思われます。このような草地では、イタリアンライグラスの発芽適期にオーチャードグラスで草地表土に光が入らないように覆っておくことが、イタリアンライグラスを抑える有効な手段です。したがって、3番草の刈り取りは10月中旬以降にすることがオーチャードグラスの多い草地を来年も維持する上で効果的です。
   以上のように、自分たちの草地で割合の高い草が何か、牧場の主な収穫牧草は何かを考慮に入れて、刈り取り時期をどうするかを決める必要があります。

イヌビエの密度がやや低い

2.1番刈り後の追肥について
 イタリアンライグラス主体の草地の場合、2番草は出穂し、葉が少なく、茎が堅くなったイタリアンライグラスになります。
 梅雨明けが順調で、7月上旬に刈り取ることができればあまり問題はないのですが、刈り取りが遅れる年にはほとんどのイタリアンライグラスが倒伏し、収穫量が下がる上に、倒れたイタリアンライグラスに地面が覆われて、3番草になるメヒシバ、イヌビエの発芽・生長が抑えられて密度が低くなり、3番 草収穫量に影響が出てきます。2番草の刈り取りが遅れた草地ではイタリアンライグラスの倒伏のために今年の3番草はイヌビエの密度が低くなっていました。イタリアンライグラスの倒伏を抑えるために、1番草と2番草刈り取り後の追肥は節約し、草地維持経費を抑えるか、その分を3番刈り後のお礼肥、あるいは石灰やリン酸施用による土壌改良に 使うのが得策だと思われます。

3.イタリアンライグラス後の3番草がメヒシバになるのか、イヌビエになるのか
 去年の3番草ではメヒシバが多くなりましたが、今年はイヌビエの割合が高くなりました。ただし、2で記したようにイタリアンライグラスの倒伏による密度低下が見られました。
 これまでの経過を見ると、イタリアンライグラス後の3番草がメヒシバになるのか、イヌビエになるのかは、2番草の刈り取り時期が大きく影響すると思われます。早く刈るとメヒシバ、7月中旬以降ではイヌビエが多くなる傾向がありそうです。

4.ワルナスビが拡がっています。
 いくつかの草地でワルナスビの侵入が問題になっています。種子でも地下部でも拡がりますので、個体数が少ないうちにスポット処理で防御するために、早期発見が大切です。草地内にナスのような花を見つけたら確認しましょう。拡がってしまうと薬剤処理で根絶し、草地更新せざるを得ない事態になります。しかし、今のところ除草剤の連年散布で防除する方法しか対応策がありません。

ワルナスビ(1回の除草剤では防除しきれない)



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