2015年7月 7日、 8日に2番草の調査を行いました。今年の5月中旬は1番草の刈り取りが順調に進む天候でしたが、その後は雨天と低温傾向が続いており、梅雨明けもやや遅れる見通しです。このため、1番草の刈り取りがやや遅れた草地では、その後の作業ができず刈り取りができないまま夏を迎えたところもいくつかあります。
今回の調査では、いくつかの例年にない状況が観察されました。
1.エゾノギシギシの大量発生と急速な成長
昨年の2番草でもギシギシの成長が目立つ草地がありましたが、今年のエゾノギシギシの成長は非常に急速で、1番草における調査では予想もできなかった状況になっており、エゾノギシギシの成長予測については今後の調査における反省点としたいと思っています。今年の気候がエゾノギシギシの成長に適していたという共通の要因が考えられますが、具体的には草地によってその原因は異なっているようです。
今回エゾノギシギシが繁茂した草地の場合、①オーチャードグラスの株化が激しく、株間の空間でエゾノギシギシが発芽し、1番草、2番草で牧草に被圧されることもなく成長した、②イタリアンライグラス主体草地で冬-春にイノシシが侵入し、土壌を掘った箇所でエゾノギシギシ種子が発芽し、伸長した、③更新草地でイタドリが萌芽して勢力を拡げてきたため除草剤散布をしたが、牧草の定着が悪いためにイタドリ地上部が枯死した裸地を覆うことができず、発芽したエゾノギシギシが急速に成長した、などの原因が考えられました。
裸地を造らない草地管理が基本的な対策ではありますが、2番刈り後、エゾノギシギシが地面に葉を拡げてくる機会をねらって対策を検討してください。
2.イタリアンライグラスの倒伏-2番草の倒伏を避けるために1番刈り後の追肥を節約
長雨で成育の良いイタリアンライグラスが倒伏した草地がいくつかあります。1番草の刈り取りが早く、刈り取り後に追肥をきちんとやった草地ほど倒伏程度が大きいように思われます。イタリアライグラスが倒伏すると、刈り取りロスが大量に発生しますし、飼料としての価値も落ちてしまいます。特に今年のように梅雨明けが遅くなる可能性がある場合には被害が大きくなりそうです。
イタリアンライグラスの倒伏を避けることはかなり困難ですが、1番刈り後の追肥を節約するのも一つの方法です。イタリアンライグラスが主体の草地になっている場合は、春肥をしっかり施して1番刈りの収量をあげるようにし、2番刈りは多収をあまり狙わずに追肥を少なくしてあまり茂りすぎないようにする方が結果的には収穫量は多くなる可能性があります。また、淡い緑色のイタリアンライグラスの方が濃い緑色のものより、牛の食い込みが良いという人もいます。
オーチャードグラス主体の草地でも倒伏が起こると病虫害の発生も見られるようになり、痛んだ株が夏枯れを起こす要因にもなります。九州では梅雨時期の高温多湿の条件で、倒伏が長引くと草地が痛む原因でもありますので、できるだけ倒伏を避ける管理法(施肥法)として、1番刈り後の肥料節約も有効だと考えています。
3.オーチャードグラスの草種・品種の特性と関連すると思われる成育不良が見られる草地
更新直後あるいは数年以内の草地で、オーチャードグラス個体数の減少とトールフェスクの増加・優占化が進んでいるのが観察されます。また、オーチャードグラスの個体数は十分あるものの成育が悪く、茎葉の黄化、下葉の枯れ上がりが目立ちます。これは草地の環境要因特に土壌要因に対する草種間の適応性の違いによるものと考えています。
多くの草地で見られるオーチャードグラスのリン不足症状と思われる下葉先端からの黄化、枯れ上がり現象は草種あるいは用いた品種の酸性土壌あるいはアルミニウムに対する耐性が高くないことによる可能性があります。
一般にオーチャードグラスという草種の酸性土壌あるいはアルミニウム耐性はあまり高くないことが報告されています(例えば、Poozesh ら(2007)。また、久住・直入の草地でベルベットグラスが増加しているところがいくつかありますが、この原因としては、2番草の刈り取りが7月初旬以降になるとベルベットグラスが種子を落とすという刈り取り時期の要因もありますが、ベルベットグラスが酸性土壌あるいはアルミニウムに対する高い耐性もつ仕組みを備えていることも重要な要因になっていると考えられます(Chen, 2013)。
草地におけるベルベットグラスの増加、オーチャードグラスの衰退、トールフェスクの増加などが観察される場合には、土壌の酸性化を疑ってみる必要があるようです。
示すオーチャードグラス株
ベルベットグラスが勢いを増してきた