久住 牧野の博物館

2015年第1回草地調査

 2015年4月27日、28日に1番草の調査を行いました。今年は春先から雨天の日が多く、晴天が続くことが少なかったようです。1番草の成長に影響が出るかもしれないと考えていましたが、天候の直接的な影響はあまりないように思われます。全体的に見て去年並の収量は見込めそうです。
 今年の主な特徴を以下にまとめてみました。
1.イタリアンライグラスの成長
 昨年3番草の調査報告に記していますが、昨年は夏から秋にかけて低温傾向が続いたことから例年2番刈り取り後には枯れてしまうイタリアンライグラスが標高の高い草地では枯れずに越夏し、3番草では再度出穂していました。この越夏した個体は冬を越し、この春には昨秋に種子から発芽した個体より速く成長しています。したがって、このような草地では今年の1番刈り収量は多くなることが期待されます。今年多くなった越夏性のイタリアンライグラスの増減が今後どうなるかについては気象の影響が大きいと思われます。今年が暑い夏になれば越夏性の個体は減少し、1年生個体が増加します。これらの割合の今後の変動によっては、刈り取り時期などの管理で注意することが少し異なってくることもあります。

2.オーチャードグラスの割合を維持する管理法の事例
もともとイタリアンライグラスとイヌビエ・メヒシバの交代する植生であった草地を更新し、オーチャードグラスを播種した草地があります。他の同様の草地の更新後でも普通に起こるように、翌年にはイタリアンライグラスが成育し、年を経るとともにその割合が急速に増加し、オーチャードグラスはどんどん消えていくことが予想されました。しかし、今回の調査ではイタリアンライグラスもかなり混在していますが、オーチャードグラスの成長も順調で、イタリアンライグラスとの競争に負けて消えていくという状況ではなく、昨年よりオーチャードグラスが勢いを増した様子が確認されました。この草地の管理法は、更新あるいは造成後、イタリアンライグラスが優勢になることを抑える一つの方法として有効であると思われます。この方法は、2番刈り後の3番草は11月あるいは12月まで刈り取らずに成長させ、冬季の放牧草地として利用するもので、秋季待機草地と呼ばれるものです。この方法ではイタリアンライグラスの発芽時期(9月下旬から10月初旬)にオーチャードグラスが上から覆いイタリアンライグラスの発芽・初期成長を抑えて、オーチャードグラスの優勢を保ちます。

3.春肥の効きが悪い草地の問題について
 いくつかの草地で堆肥の散布を行っており、その草地の多くは草の色もよく、春肥の効果も順調で出ていると判断されました。また、鶏糞焼却灰の利用草地も、徐々に土壌酸性の矯正が進んでいることが窺えます。しかし、一部の草地で、しかも更新後年数の少なく土壌改良効果がまだ十分残っていると推測される草地で、春肥の施用効果がほとんど出ない、特にリン酸欠乏症状が顕著に現れるという状況が見られました。この原因は今のところ明らかではありませんが、土壌の酸性化と関連があることは間違いないと思われます。情報をもっと集めて原因を解明し、肥料の施用が無駄にならないようにする必要があります。

イタドリの萌芽(2番草は増える可能性あり)

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