7月10日、11日に2番草の調査を行いました。10日は竹田市で観測史上最高の気温を記録する暑い日でした。今年の梅雨は例年より早く、7月8日に明けたとみられ、いくつかの牧場で早速2回目の刈り取り作業が始まっています。
晴天が続き、作業が順調に進んでいることは何よりですが、今年は、2番草刈り取りが例年より早い場合に留意すべき点を明らかにすることを重点目標に調査を行いました。
1)イタリアンライグラス-夏型1年生イネ科草交代草地の場合
この時期のイタリアンは出穂・結実していくため、下葉は枯れ上がり、急速に黄化し倒伏する割合も高くなるため、飼料としての価値は日々低下していきます。このため、一日も早い刈り取りを考えることは当然のことです。しかし、このタイプの草地の場合、確実にイタリアンの種子が地面に落ちることが毎年草地の生産を継続し、永続的に草地を維持するポイントの一つです。
これまでの大分県畜産試験場の研究や私たちの調査・研究を総合的に検討した結果、これまでは7月10日以降の刈り取りであれば来年のイタリアン生産にほとんど影響はでないと考えてきました。
今年の場合に来年の草地に生長するイタリアンの種子が確実に落ちた(落ちる)でしょうか?
穂に着いたあるいは地面に落ちた種子を開けて、2本の短い棒のようなもの(葯)が外にぶら下がっていたり、未だ種子の中にある場合は、開花前か開花直後の種子です。種子の中に白い塊(胚乳)が見られ、種子の長さの半分程度になっていれば発芽能力をもつ種子になると判断することができます。
イタリアンの立毛中のものや刈り倒されたものの種子を観察してみました。標高が低い牧野(600m程度以下の草地)では、かなりの種子が糊熟期に達しており、ほぼ確実に発芽能力を獲得すると判断されました。しかし、標高の高い牧野のイタリアンは開花あるいは開花直後であり、発芽能力を持ったものはほとんどないと判定しました。幸いなことに、高標高草地のイタリアンは、刈り取り後再生・出穂・結実する個体もかなりあり、3番草で種子を落とすことがあることを確認しています。したがって、7月10日以前に刈り取った草地でも、来年の生産が減少するという結果には必ずしもつながらないかもしれません。しかし、来年の生産の主体になるイタリアンの3番草刈り取り後の発芽・生長時期に天候などが不適な環境になった場合には、個体数が不足し、来年の1番草の減収を引き起こす危険性が高いことは念頭に置いておく必要があります。
3番草刈り取り頃の草地の様子を注意深く観察したいと思います。そして、既に刈り取られた高標高のイタリアン主体草地の来年の生産に今年の2番草早刈りがどのような影響を及ぼすかに注目し、今後の草地管理に生かす必要があります。
2)オーチャードグラスなどの寒地型多年生イネ科草が多い草地の場合
高原地帯とはいえ九州の夏はオーチャードグラスなどにとっては厳しい環境です。従来から夏枯れ対策として、できるだけ高く刈り取ることや窒素施肥の抑制が必要とされてきました。このような対策を考慮した上での早い梅雨明けに伴う2番草の早刈りは、夏枯れによる大きな再生障害を引き起こすことはないのではないかと考えます。一昨年のように2番刈りが8月になる刈り遅れの場合は、牧草は高温下で長期間生長するため、株に貯蔵する養分が消耗した頃刈り取られ再生に使える養分が足りない状態となり枯死する個体が発生します。これに対して早刈りの場合は、高温下の生長期間が短く、再生に使える養分もまだ蓄えられています。
注意しなければならない点は、早く刈ったために3番草の刈り取りも早くしたいと考えがちですが、3番草刈り取りは、気温が低下しはじめ、オーチャードが生産した養分を株に盛んに貯蔵するようになる時期(例年の3番草刈り取り時期)まで待つことがオーチャード個体の永続的な維持に有効と考えます。