1)第1回草地調査で指摘した事項のその後の経過
①オーチャード株の減少傾向が見られた牧野の中で、鶏糞堆肥の施用がオーチャードの草勢回復に大きな効果を発揮したところがありました。
②アカクローバの増加は続いているようです。秋以降は増加が目立ってくるところがあると思われますので、具体的な対応策を検討する必要が出てきます。
アカクローバの増加に関連すると思われる要因
・ イタリアン―夏雑草交代型の草地でアカクローバの割合が増加する現象が見られる。
・ アカクローバ種子の供給―2番草の刈り取りが遅れた場合(8月中旬頃)、アカクローバが多量の種子を落とす。
・ アカクローバの発芽・初期生長―アカクローバは3番刈り取り後に発芽してくるが、同時期に発芽生長するイタリアンの個体数が何らかの原因で少ない場合に、アカクローバが順調に生育し、著しい個体数増加を起こす。
・ 自然下種したアカクローバ種子は、数年間は土壌中で休眠することができるので、下種した年でなくても増加の可能性はある。
③裸地の発生があったところは、現在は夏の雑草が生育しています。裸地の発生原因が解消したわけではありませんので、今後も土壌改良等の対策を取る必要があります。
2)今回の調査結果の概要
①一番草刈り取りの遅れが草地にどのような影響を及ぼすかを牧野毎に想定しておくことが、今後の草地管理にとって重要です。
今年の1番草は冬から春にかけての低温と少雨傾向が影響して生育の遅れが出ていた上に、5月下旬以降で2日以上晴天が続いたことがほとんどなかったために、多くの牧場で刈り取り機会を逸し、1カ月以上の収穫の遅れが生じたり、7月に入っても未だ刈り取りできていなかったりしている所もありました。
まず、飼料の確保という点では経済的に大きな損失を生じることになるとしても、刈り取りの実施と刈り倒した草の草地外への持ち出しは、どのようなタイプの草地であっても絶対に行う必要があります。
1番草の刈り取りが遅れたために、特定の雑草が繁茂することがあります。今回目立ったのはベルベットグラスで、今後いくつかの牧場で勢いを増す可能性があります。また、エゾノギシギシも多量の種を落としました。今秋のギシギシの発芽・繁茂をよく観察し、防除に気をつける必要があります。
イ.従来、1番および2番草はイタリアンライグラス、3番草はメヒシバ・イヌビエが主な収穫になっている牧場
7月中に刈り取りができれば、従来通り9月末にはメヒシバ・イヌビエの十分な収穫が得られます。また、1番草の刈り遅れにより、イタリアンライグラスは発芽能力を持つ種子を落としていますので、従来のように9月下旬~10月中旬頃に次の刈り取りができれば、来年の1番草はイタリアンライグラス主体の草地になります。
ロ.最近造成(更新)しオーチャードグラスが多い草地
刈り取りが遅れると、オーチャード個体間の競争が激しくなり、大きい株が小さい株を被圧する状態が続きます。また、高温多湿のため、むれた状態となり病虫害も発生しやすくなります。その結果、小さい株が死んで大きな株が残る現象がおこり、オーチャードの個体数は減少し、株間が広く空いた草地になります。個体数の減少が激しいと収量低下となりますし、株間に多くの雑草が侵入します。
個体数の大きな減少をできるだけ回避するために、刈り取りが遅れている草地は、できるだけ早く刈り取る必要があります。ただし、オーチャードの刈り取りについては、もう一つ夏枯れをどうやって防ぐかが重要です。できるだけ高刈りとすることや8月に入っての刈り取りは避けるなどに気をつける必要があります。また、弱った株を充実させるためや株間に侵入する雑草を抑えるために、秋は生育期間を長くするよう刈り取り間隔を長くする対策も考える必要があります。
②オーチャードグラスの生長がおかしいという傾向があります。
更新したばかりの草地でもオーチャードが茶色がかっていたり、病気の発生が見られたりします。堆肥を施肥した場合のオーチャードの著しい生育回復から判断すると、施肥管理と関連する何らかの土壌養分不足が慢性的に起こっていると考えざるを得ません。改めて土壌分析データによる施肥管理の見直しを行う必要があると思います。
③リードカナリーグラスを導入する草地の評価を色々な角度からしておくのがいいと思われます。
O牧野は、リードカナリーグラスを導入し、1番草はイタリアン主体、2番、3番はメヒシバ、iイヌビエは混じるがリード主体で収穫するタイプで安定してきています。地域の条件に合った草地のタイプと位置づけることができるかもしれません。収量、飼料としての栄養価や牛の食い込み、管理上の問題等の情報を収集整理しておくことが今後の参考になると思います。
④各牧野の刈り取り日の情報収集をしましよう。
草地の刈り取り時期は、収量や草種の割合に大きな影響をもつと同時に、今後の草地の状態を決める重要な要因の一つですので、できるだけ各牧場がいつ刈り取りを行ったか、情報を収集して下さい。