4月26、27日の2011年第1回草地調査に参加しました。
去年の牧草の生育も全般に10日程度遅れていましたが、今年は更に1週間程度遅れています。
今回の調査のとりまとめの概要は次の通りです。
2011年4月26日~27日に行った草地調査において見られた特徴的な点、検討すべき問題点、注意して経過を観察する必要があると思われる点などは次の通りです。
1)全ての牧野において牧草の生育が例年より1~2週間遅れています
これは、例年より低い気温と少雨傾向という気象要因によると思われます。しかし、土壌の酸性化で牧草の根が土壌深く生育できず、土壌表層に分布するために気象の影響を受けやすくなっている例もあるようです。気象の影響を避けることは困難ですが、土作りによって丈夫な牧草を育てることができます。
2)オーチャードグラスの割合がかなり高かった牧場で、株が消えたり、減少したりしたところがあります
原因は夏枯れによると思われます。昨夏の猛暑の影響は大きいようです。2番草の刈取りが8月に入った場合には「草地管理ごよみ」に従って、できるだけ刈取り高さを高くすることや、窒素施肥を抑えるなどの対策を取ることが大切です。また、3番刈りを遅らせることにより、秋に十分生育させ、草勢の回復、貯蔵養分の蓄積をさせることが重要です。
3)裸地が発生した牧場があります
裸地発生の仕組みは未だ完全にはわかっていませんが、土壌の酸性化が引き金になっているようです。酸性化が進んだ土壌では、アルミニウムイオンによる根の生育障害、牧草に吸収できる形態のリン酸や苦土の欠乏、枯葉や根などの植物残渣の分解速度が低下し、表層に厚い有機物層ができるなどが起こります。これらが裸地化の原因になります。
4)アカクローバの割合が増加する傾向に注意
イタリアンが主体の草地で、アカクローバの割合が増加しているところがあります。アカクローバは栄養価が高いのですが、刈取り後乾燥が遅く、葉が落ち、収量の低下につながることがあります。クローバの割合があまり高くなることは避ける必要があります。広域牧場の造成当初に数カ所の牧野でアカクローバ優占になったことがありますので、今後の推移に十分注意する必要があります。
5)堆肥の施用により土壌改善に効果が出ていますが、今後は施用法に注意が必要です
堆肥の施用は、肥料費の節約の他、土壌の酸性化による害を軽減する効果もあります。今後とも完熟堆肥の施用推進が望まれます。イタリアン主体の草地で、堆肥が草地内に部分的に厚く散布されたために、イタリアンの発芽・生育障害を起こし欠株が生じているところがありました。できるだけ均一に散布する、散布時期をイタリアンの発芽後の初冬以降にする等の工夫が必要です。
6)イタリアンライグラスが減少した牧野があります
今回の例はイタリアンの発芽・初期生育不良によるものと思われます。イタリアンが発芽する時期(9月下旬~10月中旬)には刈取りを行い、草地表面に陽が当たる状態を作ることが翌年の1番草でイタリアンの高い収量を得るポイントです。